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2008.04.12

04■絵について

(ここにあるのは旧ファイルです。このページの内容を踏まえた、新たなテキスト「まんが史の基礎問題」をアップしています。トップページからアクセスして下さい)


 まんがの「絵」について考えてみる。
 一般的に「まんが的な絵」と呼ばれるものがあるように思われる。少なくとも、現代の日本でまんがを読む多くの者にとって、それをイメージすることは決して難しいことではない。
 では、その「まんが的な絵」とは、具体的にどのような絵のことをいうのだろうか。多くの場合、「線画」「輪郭的な画法」「省略的な画法」「誇張表現」「ディフォルメ」「カリカチュア」「滑稽的」「写実的でない」などの特徴が指摘される。しかし、それらは非常に漠然としており、人によって見解は一致しない。そもそも、これらの特徴を持たないまんが表現は、いくらでも指摘することができる。
 ならば、絵の形式的な特徴によって「まんが」を語ることは不可能なのだろうか。
 厳密にいえば、おそらくそうである。そもそも、絵というものの原初的な姿は「まんが的」である、とさえ言える。たとえば、古代遺跡の壁画や、器具類の装飾を見るならば、そこには「まんが的な絵」が満ちあふれている。エジプトのヒエログリフは、どこかまんが的である。子供が成長して絵を描き始めると、それは写実的な絵画ではなく、むしろまんが的である。
 絵は、手を動かした軌跡だから、その基本は、そもそも「線画」的である。「輪郭的」「省略的」などの点を考えても、それは描画の問題以前に、人間の視覚自体のあり方に大きく関わっており、まんがだけの特徴ではない。認知心理学の見地からすると、人間の知覚は、対象を省略化・単純化することによって成立しており、「描く」こと以前の「見る」ことが、すでに輪郭的・省略的だ。結果的に描かれた絵が輪郭的・省略的であっても、それをそのまままんが固有の特徴だということはできない。「誇張表現」「ディフォルメ」「カリカチュア」などについても、一般的な絵画、特に近代以降の絵画を見れば、広く用いられている手法であることは明らかである。
 「まんが的な絵」を定義することには、ほとんど意味はない。意味があるのは、「まんが的な絵」という共通認識が時代や場所によってどのように成立していたか、という歴史的な問題である。ある時代、ある場所の人々にとっては、どのような絵柄が「まんが的」と感じられていたのか。それをすくい取る行為として、この問題は考えられるべきである。
 だから、たとえば「鳥獣人物戯画」を見て、その絵をまんが的だと感じるならば、それは、現在の私たちが「まんが的な絵」をどのようにとらえているかという、私たち自身の歴史性の問題であり、そのことを十分わきまえて考察すべきことである。

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